国税庁方式 株価
非上場株式に係る贈与又は相続に際しては、相続税法上、財産の価額は「取得の時における時価」とされているが、課税実務では、財産評価基本通達に基づき評価され、贈与税又は相続税が課されている。この財産評価基本通達に基づく評価方式は、いわば収益方式、純資産方式及び比準方式を併用した評価方式と言える。また、所得税法及び法人税法においても、非上場株式の価額について評価を要することがあるが、所得税基本通達や法人税基本通達では、非上場株式を評価する際に、原則として、比準方式を基本に、当該株式価額を個別に評価することとしており、特例として、財産評価基本通達に基づく方式を一部修正した方式にて算定を行うことも認められている。
(1) 相続税法上の評価
具体的には、評価する株式の発行会社を従業員数、総資産価額及び取引金額により、大会社、中会社、小会社のいずれかに区分(財基通178)して、会社の規模に応じて、当該区分ごとに財産評価基本通達に定められた「類似業種比準方式」若しくは「純資産価額方式」により評価するか、又は両方式を一定の割合により併用して評価する(財基通179)。
また、いわゆる少数株主が株式を取得する場合には、特例として、株式を所有することによって受け取る1年間の配当金額を、10%で割り戻して評価する配当還元方式を用いる。具体的な評価方式は、次のとおりである(財基通188-2)。
その株式に係る年配当金額 その株式の1株当たりの資本金等の額 10% 50円 (注)配当金額が2円50銭未満及び無配の場合には、2円50銭とする。 以上の評価方法は、いわゆる基準(標準)的な価額であるため、本来の「時価」から乖離することがあり得る。そこで、「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」(財基通6)ことにしている。
(2) 所得税法上の非上場株式の評価
所得税法上、例えば、個人が法人から非上場株式を無償で譲り受けるなど、経済的利益を享受したときは、その株式の譲受けの時の価額によって収入金額とすべき金額が算定され(所得税法36条)、又は、個人が法人に対して、非上場株式を贈与又はその時の価額の2分の1未満の価額で譲渡したときは、「みなし譲渡」とされ、譲渡価額によらず株式のその時の価額により譲渡所得を計算することとされており(同法59条)、それぞれの場合において、所得税法上の非上場株式の評価を行うことが必要となる。 そこで、所得税基本通達23~35共-9(4)では、非上場株式の価額について、①売買実例のある場合には、「最近において売買の行われたもののうち適正と認められる価額」、②公開途上にある株式の場合には、「金融商品取引所又は日本証券業協会の内規によって行われる入札により決定される入札後の公募等の価格等を参酌して通常取引されると認められる価額」、③売買実例のないもので類似会社の株式の価額のある場合には、「類似会社の株式の価額に比準して推定した価額」、④上記①から③までに該当しない場合には、「株式の発行法人の1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」 によって評価することとされている。 ただし、上記の方法で評価が困難な場合には、所得税基本通達59-6において、「原則として」、一定の条件の下に、財産評価基本通達178から189-7までの「取引相場のない株式の評価」によって評価することが認められている。なお、上記一定の条件の具体的な内容は、以下のとおりである。 ・ 株式を譲渡又は贈与した個人が、「同族株主」に該当するかどうかは、当該個人が譲渡等の直前に保有していた議決権の数により判定すること。
・ 当該個人が「中心的株主」に該当する場合には評価対象株式の発行会社が「小会社」に該当するものとして評価すること(「類似業種比準価額×50%+純資産×価額×50%」により評価を行う。)。 ・ 純資産価額の算定に当たっては、土地と上場株式は相続税評価額(路線価等)ではなく、通常の時価に洗い替えること。 ・ 評価差額についての法人税額等相当額を控除しないこと。
(3) 法人税法上の非上場株式の評価
法人税法においても、例えば、法人が非上場株式などを譲渡した場合において、譲渡価額がその時の価額より低い額であるときには、譲渡の時の価額によって譲渡益が認識され、寄付金等とみなされるが、この場合に法人税法上の非上場株式の価額の評価が必要である。 法人税法上の非上場株式の評価は、原則ととして、法人税基本通達9-1-13の取扱いに基づき行われることになるが、①売買実例のある場合には、「事業年度終了の日前6月間において売買の行われたもののうち適正と認められるものの価額」、②公開途上にある株式の場合には、「金融商品取引所の内規によって行われる入札により決定される入札後の公募等の価格等を参酌して通常取引されると認められる価額」、③売買実例のないもので類似会社の株式の価額のある場合には、「当該価額に比準して推定した価額」、④上記①から③までに該当しない場合には、「当該事業年度終了の日又は同日に最も近い日におけるその株式の発行法人の事業年度終了の時における1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」 をそれぞれ採用することされている。 ただし、上記の方法により評価することが困難な場合には
法人税法基本通達9-1-14において、「課税上弊害のない限り」、一定の条件の下に、財産評価基本通達178から189-7までの「取引相場のない株式の評価」によることが認められている。なお、上記の条件の具体的な内容は、以下のとおりである。 ・ 当該法人が「中心的株主」に該当する場合には評価対象株式の発行会社が「小会社」に該当するものとして評価すること(「類似業種比準価額×50%+純資産価額×50%」により評価を行う。)。 ・ 純資産価額の算定に当たっては、土地と上場株式は相続税評価額(路線価等)ではなく、通常の時価に洗い替えること。 ・ 評価差額についての法人税額等相当額を控除しないこと。
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2012年8月16日 | コメントは受け付けていません。 |
カテゴリー:「超」節税法