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福岡高裁昭和63年1月21日決定(判タ662号207頁、金法1201号26頁、金判788号13頁)

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この判決は、類似会社があるようなきわめて希なケースになるとおもいます。

本件会社の発行済株式総数は35万2000株であり、株主数は329名、資本金は1億7600万円である。

 

裁判所の判断理由

 

1 株式の譲渡につき取締役会の承認を要する場合の株価(売買価格)の決定に関して定める商法204条の4第2項によると、裁判所は「会社ノ資産状態其ノ他一切ノ事情」を斟酌して当該株価の決定をなすべきところ、一般には、右株価の算定方法として、ア 類似会社比準方式、イ 純資産価額方式、ウ 配当還元方式、エ 収益還元方式などの方式がある。 ところで、右アは、類似会社の株式の取引相場を基礎にして、配当、利益、純資産を評価対象会社のそれと比較評価する方式であるところ、右類似会社の選定が可能、適切であり、比準に当たっての修正が適切な限り、合理的な算定結果が得られるものといえる。次に、イは、評価対象会社の純資産を基礎に1株当たりの純資産額を算出し、それを株式の妥当な取引価額と認める方式であり、純資産の評価については更に簿価によるか時価によるかに大別されるところ、簿価純資産は名目資本であり、実質資本と乖離があれば株価の正しい評価は出来ないうらみがあり、また時価純資産は評価対象会社の清算を前提にして右時価純資産を考慮する点で、事業の継続を前提とする会社の取引株価の決定には不適当な算定方式といえる。更に、ウは、評価対象会社の将来の1株当たりの予想利益配当額を一定の資本還元率で元本である株式の時価を求めるものであるところ、長期にわたる利益配当額の予測が可能であり、かつ、売買当事者が配当のみを期待する一般投資家である限り、この方式は最も合理性のある算定方式といえる。最後に、エは、評価対象会社の将来期待される1株当たりの利益を一定の適当な利回りで資本還元し、元本としての現在の株式価格を算出するものであるところ、実際には現在の多くの会社が利益の多くの部分を内部留保して配当に回さない方針をとっていることを考慮すれば、利益額のみをもって直ちに株式価格の評価をするのは必ずしも妥当とはいえず、とくに非上場会社の非支配的株主の持株の価格を決定するものは配当による収入であり、会社の収益自体は直接には価格決定の要素とはならないことに鑑みれば、本方式は会社の利益処分に決定的な発言力を有する支配的大株主にとっての適切な評価方式ということができる。 2 (「事案の概要」で摘示した諸事情を認定したうえ)売買価格の決定については、営業継続が前提となる本件会社の場合、イの純資産価額方式を採ることは適当でなく、配当のみに期待する非支配的一般的投資家にふさわしい前記ウの配当還元方式を基礎に、その余の方式を修正要素として考慮する態度が最も適切な評価方法ということができる。
3 以上を前提に本件をみるに、原決定の採用した○○鑑定は、同鑑定の結果を含む本件記録によると、鑑定人が本件会社の決算書類、株主及び株式関係書類、増資関係書類、会計帳簿類、課税申告関係書類など一切の関係書類を検討した上で、本件会社の普通額面株式の昭和61年2月3日以前の最も近い日における1株の価格を、前記アないしエの方式に従いそれぞれ算定し、特にウ方式により算定した株価については、過去3年間における全国銀行貸出約定平均金利と株式を含まない金融資産の平均利回りとの中間値6.23%を資本還元率とし、本件会社の昭和59年度決算期になした記念配当のうち株式配当10%を除外して考慮した過去3年間における同社の平均配当額を65円と算出した上、前者で後者を除して得た1043円を基礎に、これに類似会社(3社)の配当性向と本件会社の配当性向とを比較、修正して、1株2325円の株価を算出している。 すなわち、○○鑑定は、本件株価の算定に当たって、ウ方式の配当還元方式を基礎に据えながら、なおアの類似会社比準方式及びエの収益還元方式において検討した要素のうち配当性向の開きを修正要素として考慮する立場をとり、しかもその際本件会社の取り扱う営業内容の将来における収益力の予想及び本件会社が前記類似会社3社と比較して内部留保利益の比率が高く(この点は将来における収益力の確保、増大につながる要素である。)、その分利益配当の潜在的能力が高いことを加味して修正した上、前記株価の評価をなしているところ、かかる算定態度は前記2で検討した評価方法に沿うもので極めて合理性があり、何ら不当な点も見当たらない。

 

鑑定人が優秀な人だったみたいです。

 

裁判所の価格決定に 公式なんて存在しません。

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2012年8月16日 | コメントは受け付けていません。 |

カテゴリー:「超」節税法

譲渡制限株式の売買決定申立 裁判事例

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京都地裁昭和62年5月18日決定(判時1247号130頁、金判778号41頁)

 

会社の純資産額 5億0245万8940円

 

株主A は 所有する株式110株 11% を 会社に買い取り請求をしたが(昭和60年9月20日に) 会社は承認せず

B社を買取り人と指定した。

 

B社は 一族の経営する同族会社であり 当該会社の 株式を昭和60年5月24日にA社から 1株43万5225円で買取ったものがある。

 

 

裁判所の判断

鑑定人○○○○は株式評価鑑定書において、本件の場合株式の価格は営業の一部の譲渡であると考えるのが適当であるから帳簿価格による純資産価額方式以外の方式を採用するのは適切でないとし、又市場性がないことによる減価率20%を減ずべきである、として株式価格を算定している。 しかしながら、継続中の企業の資産の価額は必ずしも企業価値を表示するものではなく、したがって株式の価値を直接明らかにするものではないのであって、純資産価額方式も理論上の一方式とはいえるけれどもその一つにすぎないから、これのみを採用して他の方式を排斥するのは本件の場合適切でなく、又市場性がないとして算定した価額から更に減価するのは、もともと市場価格のない株式の評価をするに当たっては理由のないことといわねばならないし、減価率の数値の根拠も不明というほかない。

本件においては、前記諸般の事情を斟酌すれば右各方式11を併用するのが妥当というべきであって、本件会社が同族閉鎖会社であり、当事者双方が経営支配株主といえること、昭和60年5月24日には同会社の株式につき当事者間において1株43万5225円とする売買が成立したことがあることを考慮し、純資産価額、類似業種比準価額、収益還元価額、配当還元価額の割合を2・1・1・1とした加重平均値を基準値とするのが相当である。

ポイント 過去に売買事例があること

鑑定人が 純資産方式より評価したこと その際に20%の減額を行った。

さらに 純資産方式は簿価によったこと

 

鑑定人の問題点

鑑定人は 国税庁方式の公式で純資産価額を出したことを 裁判所は 指摘して他の評価方法も考慮

しなさいと判決、 過去の売買事例については考慮すべきもの。。。? 結果

純資産価額、類似業種比準価額、収益還元価額、配当還元価額の割合を2・1・1・1とした加重平均値を基準値とするのが相当である。

当事者間に合意が無い場合の裁判所価額ですが、鑑定人の鑑定評価も採用できないとしているところが

株価評価の難しいところであります。

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2012年8月16日 | コメントは受け付けていません。 |

カテゴリー:「超」節税法

国税庁方式 中小企業庁方式 裁判所方式の関係

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Ⅳ 他の制度における非上場株式の価額との関係
非上場株式の各種評価方式を解説し、固定合意において評価方式を選択する際の留意点を説明してきたが、こうした方式によって算定された合意時価額が、他の制度において算定される価額との間で乖離が生じることがあり得る。この点については、次のとおり考えることができる

1.国税庁方式による非上場株式の価額との関係
先述したとおり、固定合意においては、後継者が株式を贈与等により取得することが要件となっているため、まず、贈与税に係る価額と合意時価額との関係が問題となる。例えば、合意時価額の算出に当たり、 (1)保有資産が少ないが大きな利益を出しているために収益方式を採用、 (2)資産規模が大きいために純資産価額方式を採用、 した場合などには、それぞれの評価方式の内容の差異等によって、国税庁方式に基づく価額との間で乖離が生じ得る。 今後、固定合意を利用する場合には、一括贈与を前提とした贈与税の納税猶予制度を適用することが多くなると考えられることから、合意時価額と贈与税に係る国税庁方式に基づく価額との間の乖離が生じてしまうケースも増加することが想定される。この乖離が生じる場合、合意時価額が贈与税の計算における価額を上回ったときには、合意時価額によって課税されないかという懸念(財基通6の適用)が生じ、その逆のときには、合意時価額によって納税申告をすることができないかという疑問が生じる。 しかし、このような乖離は、国税庁方式が課税を前提とした評価方式であり、経営承継法の固定合意とその趣旨・目的を異にすることから、当然に生じる得るものと言え、後継者と非後継者はそのような乖離が生じることを認識した上で合意を行っていることから、乖離が生じること自体は問題がない。

Ⅳ 他の制度における非上場株式の価額との関係
非上場株式の各種評価方式を解説し、固定合意において評価方式を選択する際の留意点を説明してきたが、こうした方式によって算定された合意時価額が、他の制度において算定される価額との間で乖離が生じることがあり得る。この点については、次のとおり考えることができる。また、前述のような課税上の疑義については、合意時価額が贈与税の計算における価額を上回ったとしても、従前の裁判例9に照らして直ちに課税問題が生じるとも考えられないし、合意時価額が贈与税の計算における価額を下回ったときには、いずれが相続税法上の「時価」として妥当であるか等10を見極めて納税申告をすることが望まれる。 なお、その合意が、非後継者との関係において、国税庁方式と当該方式以外のそれぞれの評価方式について、情報の共有が図られている中で行われたものであれば、固定合意の評価に際して、国税庁方式を採用することについても問題はないと考えられる。 更に、このような贈与税の課税問題に限らず、固定合意における合意時価額が専門家によって相当であると証明された場合には、その価額によって評価対象会社の関係者間の取引(売買)が行われることも想定される。その場合には、相続税法上の課税問題のみならず、所得税法上及び法人税法上の課税問題が生じることになる。しかし、そのような場合にも、所得税基本通達23~35共-9及び法人税基本通達9-1-13において、適正と認められる売買価額や純資産価額等を参酌し、通常取引されると認められる価額をもって評価することとされ、かつ、各基本通達とも、一定の条件の下、財産評価基本通達の準用を認めているのであるから、合意時価額が、前記各通達にいう「価額」に相当するものとして、課税上も参考にされることも考えられる。 以上の各税目の取扱いに照らせば、国税庁方式は、常に画一的で固定的(形式的)な評価方式にこだわっている訳ではなく、弾力的に取り扱うことを明らかにしている。このため、固定合意において専門家が相当であると証明した合意時価額が、合意後の課税関係においても参考にされることも考えられる。また、そのためにも、諸条件を精査した上で合意時価額が相当であることの証明が求められることになる。

2.会社法上の制度における非上場株式の価額との関係
会社法上、非上場株式の評価が問題となる代表的な制度として、譲渡制限株式の買取人指定制度とそれに伴う売買価格決定制度がある。
買取人指定制度の趣旨は、会社の閉鎖性維持と株主の投下資本回収の機会の確保を調整することにあるが、売買価格決定制度は、買取人指定によって成立した売買契約に係る譲渡制限株式の売買価格自体を決定するものであり、裁判所は、関係者間の利害を調整しつつ、対象となっている株式の適正な価額を判断する。 固定合意においても、後継者と非後継者という利害関係者間の利害を調整しつつ、対象となっている株式の適正な価額を定めるのであるから、固定合意を行う際には、売買価格決定制度の下での裁判例は、事実関係が一定程度共通している場合には参考となり得る。 もっとも、売買価格決定の非訟事件手続は、裁判所がその裁量により価格を決定するものではあるが、実際には、申立人と相手方双方の主張立証の内容及び程度が評価方式の選択及び価格の決定において重要な影響を与えることがあることから、事実関係の共通性だけではなく、特定の評価方式を採用した理由等を精査し、固定合意を行う際に参考とすることが適切なものであるかを判断することが望ましい。

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2012年8月16日 | コメントは受け付けていません。 |

カテゴリー:「超」節税法

国税庁方式 株価

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非上場株式に係る贈与又は相続に際しては、相続税法上、財産の価額は「取得の時における時価」とされているが、課税実務では、財産評価基本通達に基づき評価され、贈与税又は相続税が課されている。この財産評価基本通達に基づく評価方式は、いわば収益方式、純資産方式及び比準方式を併用した評価方式と言える。また、所得税法及び法人税法においても、非上場株式の価額について評価を要することがあるが、所得税基本通達や法人税基本通達では、非上場株式を評価する際に、原則として、比準方式を基本に、当該株式価額を個別に評価することとしており、特例として、財産評価基本通達に基づく方式を一部修正した方式にて算定を行うことも認められている。
(1) 相続税法上の評価
具体的には、評価する株式の発行会社を従業員数、総資産価額及び取引金額により、大会社、中会社、小会社のいずれかに区分(財基通178)して、会社の規模に応じて、当該区分ごとに財産評価基本通達に定められた「類似業種比準方式」若しくは「純資産価額方式」により評価するか、又は両方式を一定の割合により併用して評価する(財基通179)。

 

また、いわゆる少数株主が株式を取得する場合には、特例として、株式を所有することによって受け取る1年間の配当金額を、10%で割り戻して評価する配当還元方式を用いる。具体的な評価方式は、次のとおりである(財基通188-2)。
その株式に係る年配当金額 その株式の1株当たりの資本金等の額 10% 50円 (注)配当金額が2円50銭未満及び無配の場合には、2円50銭とする。 以上の評価方法は、いわゆる基準(標準)的な価額であるため、本来の「時価」から乖離することがあり得る。そこで、「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」(財基通6)ことにしている。

 

(2) 所得税法上の非上場株式の評価
所得税法上、例えば、個人が法人から非上場株式を無償で譲り受けるなど、経済的利益を享受したときは、その株式の譲受けの時の価額によって収入金額とすべき金額が算定され(所得税法36条)、又は、個人が法人に対して、非上場株式を贈与又はその時の価額の2分の1未満の価額で譲渡したときは、「みなし譲渡」とされ、譲渡価額によらず株式のその時の価額により譲渡所得を計算することとされており(同法59条)、それぞれの場合において、所得税法上の非上場株式の評価を行うことが必要となる。 そこで、所得税基本通達23~35共-9(4)では、非上場株式の価額について、①売買実例のある場合には、「最近において売買の行われたもののうち適正と認められる価額」、②公開途上にある株式の場合には、「金融商品取引所又は日本証券業協会の内規によって行われる入札により決定される入札後の公募等の価格等を参酌して通常取引されると認められる価額」、③売買実例のないもので類似会社の株式の価額のある場合には、「類似会社の株式の価額に比準して推定した価額」、④上記①から③までに該当しない場合には、「株式の発行法人の1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」 によって評価することとされている。 ただし、上記の方法で評価が困難な場合には、所得税基本通達59-6において、「原則として」、一定の条件の下に、財産評価基本通達178から189-7までの「取引相場のない株式の評価」によって評価することが認められている。なお、上記一定の条件の具体的な内容は、以下のとおりである。 ・ 株式を譲渡又は贈与した個人が、「同族株主」に該当するかどうかは、当該個人が譲渡等の直前に保有していた議決権の数により判定すること。
・ 当該個人が「中心的株主」に該当する場合には評価対象株式の発行会社が「小会社」に該当するものとして評価すること(「類似業種比準価額×50%+純資産×価額×50%」により評価を行う。)。 ・ 純資産価額の算定に当たっては、土地と上場株式は相続税評価額(路線価等)ではなく、通常の時価に洗い替えること。 ・ 評価差額についての法人税額等相当額を控除しないこと。

(3) 法人税法上の非上場株式の評価
法人税法においても、例えば、法人が非上場株式などを譲渡した場合において、譲渡価額がその時の価額より低い額であるときには、譲渡の時の価額によって譲渡益が認識され、寄付金等とみなされるが、この場合に法人税法上の非上場株式の価額の評価が必要である。 法人税法上の非上場株式の評価は、原則ととして、法人税基本通達9-1-13の取扱いに基づき行われることになるが、①売買実例のある場合には、「事業年度終了の日前6月間において売買の行われたもののうち適正と認められるものの価額」、②公開途上にある株式の場合には、「金融商品取引所の内規によって行われる入札により決定される入札後の公募等の価格等を参酌して通常取引されると認められる価額」、③売買実例のないもので類似会社の株式の価額のある場合には、「当該価額に比準して推定した価額」、④上記①から③までに該当しない場合には、「当該事業年度終了の日又は同日に最も近い日におけるその株式の発行法人の事業年度終了の時における1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」 をそれぞれ採用することされている。 ただし、上記の方法により評価することが困難な場合には

法人税法基本通達9-1-14において、「課税上弊害のない限り」、一定の条件の下に、財産評価基本通達178から189-7までの「取引相場のない株式の評価」によることが認められている。なお、上記の条件の具体的な内容は、以下のとおりである。 ・ 当該法人が「中心的株主」に該当する場合には評価対象株式の発行会社が「小会社」に該当するものとして評価すること(「類似業種比準価額×50%+純資産価額×50%」により評価を行う。)。 ・ 純資産価額の算定に当たっては、土地と上場株式は相続税評価額(路線価等)ではなく、通常の時価に洗い替えること。 ・ 評価差額についての法人税額等相当額を控除しないこと。

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