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国税庁方式 中小企業庁方式 裁判所方式の関係

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Ⅳ 他の制度における非上場株式の価額との関係
非上場株式の各種評価方式を解説し、固定合意において評価方式を選択する際の留意点を説明してきたが、こうした方式によって算定された合意時価額が、他の制度において算定される価額との間で乖離が生じることがあり得る。この点については、次のとおり考えることができる

1.国税庁方式による非上場株式の価額との関係
先述したとおり、固定合意においては、後継者が株式を贈与等により取得することが要件となっているため、まず、贈与税に係る価額と合意時価額との関係が問題となる。例えば、合意時価額の算出に当たり、 (1)保有資産が少ないが大きな利益を出しているために収益方式を採用、 (2)資産規模が大きいために純資産価額方式を採用、 した場合などには、それぞれの評価方式の内容の差異等によって、国税庁方式に基づく価額との間で乖離が生じ得る。 今後、固定合意を利用する場合には、一括贈与を前提とした贈与税の納税猶予制度を適用することが多くなると考えられることから、合意時価額と贈与税に係る国税庁方式に基づく価額との間の乖離が生じてしまうケースも増加することが想定される。この乖離が生じる場合、合意時価額が贈与税の計算における価額を上回ったときには、合意時価額によって課税されないかという懸念(財基通6の適用)が生じ、その逆のときには、合意時価額によって納税申告をすることができないかという疑問が生じる。 しかし、このような乖離は、国税庁方式が課税を前提とした評価方式であり、経営承継法の固定合意とその趣旨・目的を異にすることから、当然に生じる得るものと言え、後継者と非後継者はそのような乖離が生じることを認識した上で合意を行っていることから、乖離が生じること自体は問題がない。

Ⅳ 他の制度における非上場株式の価額との関係
非上場株式の各種評価方式を解説し、固定合意において評価方式を選択する際の留意点を説明してきたが、こうした方式によって算定された合意時価額が、他の制度において算定される価額との間で乖離が生じることがあり得る。この点については、次のとおり考えることができる。また、前述のような課税上の疑義については、合意時価額が贈与税の計算における価額を上回ったとしても、従前の裁判例9に照らして直ちに課税問題が生じるとも考えられないし、合意時価額が贈与税の計算における価額を下回ったときには、いずれが相続税法上の「時価」として妥当であるか等10を見極めて納税申告をすることが望まれる。 なお、その合意が、非後継者との関係において、国税庁方式と当該方式以外のそれぞれの評価方式について、情報の共有が図られている中で行われたものであれば、固定合意の評価に際して、国税庁方式を採用することについても問題はないと考えられる。 更に、このような贈与税の課税問題に限らず、固定合意における合意時価額が専門家によって相当であると証明された場合には、その価額によって評価対象会社の関係者間の取引(売買)が行われることも想定される。その場合には、相続税法上の課税問題のみならず、所得税法上及び法人税法上の課税問題が生じることになる。しかし、そのような場合にも、所得税基本通達23~35共-9及び法人税基本通達9-1-13において、適正と認められる売買価額や純資産価額等を参酌し、通常取引されると認められる価額をもって評価することとされ、かつ、各基本通達とも、一定の条件の下、財産評価基本通達の準用を認めているのであるから、合意時価額が、前記各通達にいう「価額」に相当するものとして、課税上も参考にされることも考えられる。 以上の各税目の取扱いに照らせば、国税庁方式は、常に画一的で固定的(形式的)な評価方式にこだわっている訳ではなく、弾力的に取り扱うことを明らかにしている。このため、固定合意において専門家が相当であると証明した合意時価額が、合意後の課税関係においても参考にされることも考えられる。また、そのためにも、諸条件を精査した上で合意時価額が相当であることの証明が求められることになる。

2.会社法上の制度における非上場株式の価額との関係
会社法上、非上場株式の評価が問題となる代表的な制度として、譲渡制限株式の買取人指定制度とそれに伴う売買価格決定制度がある。
買取人指定制度の趣旨は、会社の閉鎖性維持と株主の投下資本回収の機会の確保を調整することにあるが、売買価格決定制度は、買取人指定によって成立した売買契約に係る譲渡制限株式の売買価格自体を決定するものであり、裁判所は、関係者間の利害を調整しつつ、対象となっている株式の適正な価額を判断する。 固定合意においても、後継者と非後継者という利害関係者間の利害を調整しつつ、対象となっている株式の適正な価額を定めるのであるから、固定合意を行う際には、売買価格決定制度の下での裁判例は、事実関係が一定程度共通している場合には参考となり得る。 もっとも、売買価格決定の非訟事件手続は、裁判所がその裁量により価格を決定するものではあるが、実際には、申立人と相手方双方の主張立証の内容及び程度が評価方式の選択及び価格の決定において重要な影響を与えることがあることから、事実関係の共通性だけではなく、特定の評価方式を採用した理由等を精査し、固定合意を行う際に参考とすることが適切なものであるかを判断することが望ましい。

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2012年8月16日 | コメントは受け付けていません。 |

カテゴリー:「超」節税法

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